東京高等裁判所 昭和35年(ラ)457号 決定
共同担保となつている数個の不動産につき抵当権実行による競売を実施する場合において、とくに一括競売に付する旨の売却条件が定められていない限り、そのうちの一部の物件についてのみ法定条件に適つた競売申出があつたときは、裁判所はその競落を許可しなければならないものである。たとえ分割競売をした為に、共同担保になつている他の担保物件の価値が減少し、債務者が損害を蒙る結果を招来してもやむをえないところであるから、原決定にはなんら違法のところはない。
(奥田 下関 秦)
抗告の理由
一、本件競売手続に於て相手方である債権者東京出版販売株式会社に対しては元金百参拾万円也の債権につき別紙目録記載の建物(一階)の外其敷地である同所三百六拾八番地の七宅地二十五坪九合五勺同所同番の六宅地五坪五合同所同番の一九宅地一坪八合九勺の土地が共同担保となり抵当権設定登記を経て居るのであり該債権及外に元金参拾万円也の債権については其抵当物である(二階)も共に本件競売手続に於ける目的法であり競売に附せられて居る次第である、右抵当物件中別紙目録記載の競落建物は鉄筋コンクリート造陸屋根四階建の内一階部分で前記共同担保の目的である土地と分離して本件に於て前記申立の趣旨の如く競落されたのであるから競落人が競落代金を完納して所有権を取得した暁は前記土地の上に長年月に及び法定地上権を取得することとなる次第である
二、以上の次第であるから競落建物の敷地は永年に及び競落人である地上権者に使用収益する権利を与へた結果となり土地の価格は之が為めに殆んど無価値となつたと言つても過言ではないのである
本来競売申立人は本件競売を申立るに際し目的物である土地建物を一括して競売に附すべき旨の申立に及ぶべきであつたが之を怠つた結果一階部分のみを分離して競落された次第であるが斯くては債務者である抗告人は他の競売の目的物(土地、建物)の価格下落の結果予期せざる損害を蒙る結果となり抗告人の迷惑此上もなき次第であります
三、以上の次第であるから競売手続に於て執行機関である執行吏は法定地上権の発生を伴ふが如き場合、利害関係人に生ずることあるべき損失の有無を注意し競売手続を行ふ可きであり又執行裁判所は斯の如き場合競落許可を与ふべきでないものと思維せらるるのであるが静岡地方裁判所沼津支部に於ては昭和三十五年四月三十日別紙目録記載の一階部分のみ分離した競落に対し許可決定を為したのは違法の手続であるから取消さる可きものであると信ずる次第である